アスリートとの会話の中で、「もっと柔らかく」とか、「身体が開かないように」、「腰で切る」などの言葉で自身の動きを表現したり、感覚を伝えてくれる場合があります。こうした表現自体は、非常に直感的で、感覚的です。僕は、アスリートのこうした表現を聞くのが昔から好きで、これらの表現はどんなことを意味するのだろう?と自分の中で、【言語変換】してきました。
というのも、トレーニング指導の専門家として、アスリート自身が求める感覚に対して、自身の専門性をマッチングさせながら、競技パフォーマンスアップの寄与できればと思って、今も活動しています。
そうした中、「ことば(言語)」と「身体」の関係に関する議論について、非常に興味深い議論をしている書籍を先日読みました。今回の記事では、その書籍の内容を紹介しつつ、自身の所感についてまとめていきたいと思います。
スポーツは「動き」の世界
僕が仕事をしているスポーツの世界において、アスリートの動きを観察する際に、上記のことは、理解しておく必要があると僕は考えています。
特に、最近では、映像技術の発達により、以前よりも細かく、そして正確に、【アスリートの動き】が見えるようになってきました。その結果、動きの中にあるエラーと思われる箇所を切り抜き、その部分を改善させるために、コーチングする機会も多くなっているように思います。
それによって、そのエラーが改善され、競技パフォーマンスが改善したり、向上したりする選手も多く存在すると思います。しかし、一方で、【より正確な情報】を手にすることで、その対象であるアスリート自身が、自分でその情報を処理することができずに、どう動けば良いかわからなくなるという場面も存在しているのではないかと僕は考えています。
前述した書籍から引用すれば、「やっている本人(アスリート)は、どこに意識を置いて、どこに力を入れているのかを伝えることができない。」という状況が生じてしまうこともあると思います。
細かいことに意識しすぎると過剰に動きを意識してしまい、逆に動くことができないといったことが生じるのが、スポーツにおける動きの世界には存在すると思います。
そういったこともあり、スポーツの世界においては、「アスリートの独特の感覚や感性に働きかけるようなコーチング」がなされていると僕は思っています。
アスリートへのコーチングが上手な人の特徴として
上記した書籍には、アスリートの独特の感覚や感性を理解した上で、「相手の状況に応じて、どんなことばを使うことが的確かを直感的に判断し、ことばを使うことができる人は、コーチングが上手である」と記載されています。
このことは僕自身も同意で、これまで僕自身が関わった競技コーチには、本当にことばを扱うのが上手だなと思う人がいらっしゃり、そういう人たちは揃って、アスリートの気持ちを鷲掴みにして、アスリート、チームのパフォーマンスを最大化させることができると感じます。
そのような競技コーチたちは、「ある動きをいちばん特徴づけている部分を抜き出し、それを本人の主観と客観的な動きを組み合わせて比喩で伝えている」とされており、【動きに関する言語化が上手】であると、書籍では紹介されています。
というのも、ことばには、「認知的な意味合いで情報を伝える役割」と「感情を伝える役割」の2つの役割があるとされており、上記したようなコーチングが上手な競技コーチは、2つの役割を区別した上でコーチングをしていると考えられます。
僕自身はこのようなコーチングの上手な競技コーチを目の当たりにしてきたので、自分自身のトレーニング指導においても、アスリートの独特な感覚や感性を理解した上で、コーチングをすることを意識しています。
一方で、アスリートにもさまざまなタイプが存在し、感覚や感性によるコーチングよりも、ロジックに基づいたコーチングを好むアスリートがいるのも事実なので、そのようなアスリートに対しては、トレーニング指導の専門家として、相手が望む専門的なロジックを踏まえてコーチングをするようにしています。
つまりコーチングにおいては、相手(アスリート)との共通言認識は何なのか?ということを踏まえた上でことばを使わないと、どこからの場面で意思疎通ができなくなってしまうということが生じると考えています。
トレーニング指導の専門家として
相手によって、使うことばやコミュニケーション方法を変える、ということは僕は非常に重要だと思っています。
上記したように、アスリートにも様々なタイプが存在するので、相手がどんなタイプなのかを踏まえて、ことばを選ぶ必要があります。また、トレーニング指導の専門家同士であれば、多くの場合、共通認識や前提条件が異なっていることが多いので、見えているものや目的としているものが異なってしまいます。
そういった意味では、主観的・直感的な情報と、客観的・論理的な情報の二つの視点を自分自身の中に共存させておく必要があると僕は考えています。
特に、専門家としては、経験や実感といった主観に頼るだけではダメで、物事の原因や結果となる根拠をしっかりと押さえておくことが非常に重要です。全くの偶然による結果を、真に受けてしまっていては、それは専門家としての姿勢としては相応しくないと考えます。
「要素Aが原因となり、要素Bが結果として起こる」という原因と結果の関係(因果関係)をしっかりと見極めて判断していくことは、専門家としては持つべき姿勢であると思います。そういった情報に触れる機会を増やしていくことで、目の前で起きている現象に対する見方が変わってくるのではないかと思います。
そうした訓練を続けていくことで、トレーニング指導の専門家としてのコーチング自体にも、変化が生じると僕は考えています。それらをしっかりと押さえた上で、コーチングができれば、アスリートの感覚や感性に寄り添いつつも、根拠に基づいた判断を下すことができるのではないかと思います。
そういった意味では、やはり、【art of coaching】なのだろうなと僕は考えています。(おそらく、ずっと明確な答えは出ないのかもしれません。)
最後に
コーチングって、本当に難しいなと日々感じます。ことばを扱う仕事なので、やはりことばを適切に表現できないと、クライアントの求めているような仕事を遂行できないと感じます。そういった意味では、やはり読書をすることは一番だと思っていて、その中から様々な表現を学び、なるほど、こういう風に伝えると良いのか?と考えることができると感じています。
そのほかにも、育児に積極的に関わることも、ことばを学ぶ上では重要だなと僕は感じています。子どもを相手にし、相手がわかることばを選び、相手に納得してもらうためには工夫が必要だからです。
その二つを、ジム起業してからは同時進行で実施できているので、昔よりもコーチングのレベルは確実に上がっているのかなと、自分自身では感じているところです。とはいえ、そこに因果関係はほぼないとは思いますが(笑)
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スポーツは「動き」の世界です。動くということは、連続的でつながりがあることです。静止画をことばで表現するのとは違い、動きを含めて表現しなければなりません。もし、正確に描写をするなら、どれだけことばが必要なのだろうかと思います。仮に数万のことばを用いても動きを本当に正確に描写することはできないでしょう。
(為末大・今井むつみ 『ことば、身体、学び 「できるようになる」とはどういうことか』 扶桑社新書より引用)