2021年8月12日。メジャーリーグ ホワイトソックス VS ヤンキースのゲームは、ホワイトソックスのホームであるシカゴではなく、車で4時間ほど離れた隣州アイオワ州ダイアーズビルで行われました。
アイオワ州ダイアーズビルと聞いて、ピンとくる人はそれほど多くないとは思いますが、映画「フィールドオブドリームス」の舞台となった球場、と聞けば、思い出す方もいらっしゃると思います。
その映画の舞台となった球場(正確にはその隣に建設)で、メジャーリーグ公式戦が開催された事実に驚いたことはもちろん、映画の世界観を忠実に再現したプロモーション、そして、その体験を通じたマネタイズ、、、といったことから、アメリカのスポーツビジネスの強さを実感しました。と同時に、東京オリンピック、パラリンピックを開催している日本、東京はどうなのか?ということについて少し調べてみました。
映画の世界観そのままに
映画「フィールド・オブ・ドリームス」は、1989年に公開。ケビン・コスナー主演で、「家族愛」「夢」などをテーマにしている作品。
ここでは詳細は割愛するが、ケビン・コスナー演じるアイオワ州でトウモロコシ農家を経営する主人公がある日、農園で「それ(野球場)を造れば、彼はやってくる」という謎の声を耳にし、それを実行し、農園の一部を潰して野球場を作り、そこにすでに死んでしまったはずの名選手たちが集まって、野球を楽しむ、、、といったものでした。
僕は、父親の影響で、小学生くらいから、父親が録画した勝手に自分で見ていて、そのため、今でも映画鑑賞が趣味の一つなのですが、その中の作品に、この「フィールド・オブ・ドリームス」がありました。
今回、この試合の様子がSNSで流れてきたことをきっかけに、当時の記憶がおぼろげながら蘇ってきました。が、それ以上に、その作品の世界観そのままに、この試合(しかも公式戦)が行われたこと、そして、そのプロモーションが行われていたことに、物凄く衝撃を受けました。
そして、色々と記事を調べてみると、この試合は、昨年の8月に開催予定であったのですが、コロナウィルスの影響で、1年延期になり、この日を迎えたということがわかりました。また、この試合だけのために、映画と同じ雰囲気の球場を、メジャーリーグ公式戦が開催できるレギュレーションで建設したということ知りました。
このたった1試合だけのための球場建設に、MLBが投じた費用、約500万ドル(約5億5000万円)。しかも、観客席は、8,000席しかありませんでした。(通常平均40,000席前後)
そういった状況でも、この投じた資金を回収するためには、チケット収入、そして、このゲーム自体の放映権、及び、広告収入が重要となりました。
ちなみに、チケットは、こちらの記事によると、平均価格は1,326ドル(約14万6千円)とのこと。単純計算で、1,168,000,000円以上のチケット収入となり、この時点で、建設費に関しては、ペイできてしまっています。それに、広告収入などを加味すれば、興行収入としては、魅力的なものになったのは間違いありません。(ちなみに、購入できるのは、アイオワ州に住所がある人たちのみとのこと)
しかし、重要なことは、「約14万円のチケットでも購入したい!となぜ思えるのか?」ということです。
ホワイトソックス VS ヤンキースの試合は、通常のリーグ戦で年間数試合は見ることはできますし、チケットももっと安価です。高いコストをかけてでも、その会場で試合観戦したい!と思わせる世界観を作り、観客に試合だけではない、”体験”を提供したことこそが、大きなポイントであると思いました。
ちなみに、映画で使用した球場は、映画公開後は、観光地となり、いつでも誰でも球場に足を踏み入れることができ、かつ、主人公の自宅にも入ることができます。作ってすぐに崩しているわけではなく、きちんと運用していたことで、今回、すぐに、隣接して球場を作ることができたのかと思います。そして、この考えこそが、本当に大事だと、東京オリンピックからも感じました。(フィールドオブドリームス ロケ地ツアーサイトはこちら)
試合のプロモーション動画はこちら
作るだけじゃなく、その後のことを考えることの重要性
一方で、東京オリンピックを見てみるとどうでしょうか?莫大に膨れ上がるスタジアム建設費用。新国立競技場に至っては、大会後のメインテナントも決まっておらず、毎年、ランニングコストが垂れ流されることになるでしょう。
ちなみに、ロンドンオリンピックのメインスタジアムは、その後、サッカープレミアリーグのウェスト・ハムがメインテナントになりました。(参考記事はこちら)この記事によると、ロンドンにおいても、東京と同じように、建設費予算がどんどん膨れ上がり、それをめぐり様々な批判を受けています。しかし、それでも、その後、使用するメインテナントが決まり、それ以外でも、最近では、メジャーリーグの興行を行うなど、いろいろな形で、きちんと活用することで、スタジアム経営をしていることが伺えます。(それでも赤字のようですが…)
ロンドンでもそのような状況であるにも関わらず、東京では、東京オリパラ後のメインテナントは決まっていません。この記事によると(こちら)、年間の維持管理費は、約24億円。
新国立競技場の所有・運営を行う日本スポーツ振興センターによると、収入約38億4000万に対し、支出が約35億円と、差し引きで3億円強の黒字、との見方をしているようですが、この試算には、上記の記事でも指摘されている、”今後、50年間の修繕費を含めた維持管理費”を含めた試算にしておらず、それらを踏まえると、実施には、黒字を維持できるとは考えにくい”との見方をされています。(引用記事はこちら)
ちなみに、主な収支として、「プレミアム会員事業」の売上見込みが年約12億とのこと。しかし、現状、プロスポーツチームがホームスタジアムとして利用する可能性がなく、年間172日の稼働日のうち、1/3の54日が陸上競技での使用を想定されているとのことです。
しかしながら、陸上競技関係者には失礼を承知で言えば、陸上競技で、スタジアムを満席にすることは非常に難しいと言わざるを得ません。仮に、東京オリンピックの100m決勝で行ったような演出を、全ての競技において実施し、”観るスポーツ”としての魅力を存分に出したとしても、難しいと思われます。それにも関わらず、上記のような試算をしてしまっていることは非常に残念ではありますし、リーダーシップをとっている人たちの経営リテラシーを疑わざるを得ない印象です。
新国立競技場だけでなく、そのほかの関連施設の後利用に関しても、同じように、それほど議論されていないようにも思います。プロスポーツチームは、スポーツビジネスとして経営手腕を発揮しているリーダーがいて、経営面にも理にかなったスタジアム、そしてアリーナなどを建設している印象ですが、東京オリンピックの関連施設に関しては、その辺りのセンスがあまりない人たちが、オリンピックだけのために、税金や国費を使用して作ったような印象を持ってしまうのは僕だけではないように思います。
・・・再三に渡り、民間からも、新国立競技場を巡っては議論を発していたにもかからず、結果的に残念な方向にやはり進んでしまうのかなと思います。「ボタンの一つ目をかけ間違えた」という表現が本当にふさわしい状況になってしまったなと、今は思うほかありません。(関連記事はこちら)
ボタンの一つ目をかけ間違えないために
オリンピック関連施設に関しての議論は、きっと、大会後に、どんどん浮上してきそうな印象です。ただでさえ、コロナウィルスの影響で、経済活動を停滞せざるを得ない状況になっており、国の財源は圧迫される可能性は高いはずです。
もちろん、コロナウィルスの蔓延は予想することはできなかったから仕方ないとして、東京オリンピック関連施設の建設費、管理維持費などに関しては、想定できたこととですし、そもそも、後利用を考えて、テナントが入りやすい形で、設計、建設することができたのではないかなとも思います。(実際にそのようにしている施設もあるかもしれませんが…)
その点、今回のMLBが行った、「フィールド・オブ・ドリームス」の企画は、きちんと試算された上で、建設され、後利用できる形をきちんと取っているようにも感じます。(実際、今回建設したスタジアムの管理維持費がどの程度かはわかりませんが…)MLBがきちんとスポーツビジネスとして、採算が取れる構造を作って、開催したのだろうと思います。
これは、”観るスポーツ”としての価値観を高めるという”目的”が明確であったからこそできたことでしょう。目的が明確であれば、実施することの整合性も高くなり、より具体的な行動ができます。しかし、目的が不明確であれば、そのようにいかず、それぞれが良かれと思うことをやってしまい、結果として、方向性がズレてしまうのかもしれません。
そういった意味でも、「ボタンの一つ目をかけ間違えないため」にも、”目的を明確”にし、その目的に沿った行動をしていくことが、非常に重要だと改めて感じます。
今回の東京オリンピックの目的は何だったのでしょうか?多分、僕は、この問いに答えることができません。きっと、開催を引っ張ったリーダーたちですら明確に答えることはできないかもしれません。それくらい、時間経過の中で、ぐちゃぐちゃになっていき、帳尻合わせ的に、開催まで運び、コロナウィルスの影響もあり、最後は、開催すること、感染者をできるだけ出さずに終わること、が目的になってしまっていたようにさえ思います。このようなことからも、改めて、「目的を明確にする」ということが大事なと感じました。(関連記事はこちら )
大会に参加したアスリートたちは、それぞれが掲げた目的、目標に向けて、準備をしてきました。そして、自分が今できるパフォーマンスを発揮し、結果や成果を手に入れたのだと思います。しかし、その大会を実行する、そして支えるリーダーたちは、どうだったのか?と思わざるを得ないなと思いました。
目的、目標を明確にし、実行力のあるリーダーが、日本には、今、本当に必要なのだろうなと思います。足引っ張りをするのではなく、より良い国にしていく、という大きな目的のために、政治をして欲しいなと思います。
”日本を今一度、洗濯いたし申候 ー 坂本龍馬 ー” という感じでしょうか…
まとめ
MLB at フィールド・オブ・ドリームスというメジャーリーグの興行から、東京オリンピックの後利用について、私見を書いてみました。当然、その立場にならなければ、その難しさはわからないと思いますし、同じような立場でのストレスも非常に大きいことは事実だと思います。
とは言え、何とかならないものか…とどうしても感じてしまいます。結論、選挙にきちんといって、然るべきリーダーを選んでいかなくてはいけないのかな、と思いました。
・目的、目標を明確にすることで、やるべきことが具体的になり、行動力が上がる
・そのためにも、ボタンの一つ目をかけ間違えないようにすること
・出したい成果、結果からの逆算での準備をしていくことは大事
最後に
MLB at フィールド・オブ・ドリームスを見て、映画「フィールド・オブ・ドリームス」を鑑賞し、映画の感想とともに、今回のMLBのイベントについて書こうと思っていたら、いつの間にか、東京オリンピックの後利用のことを書いてしまいました。しかも長文で。
ここまで、読んで頂いた方、本当にありがとうございます。日本がより良い国になっていくといいなと思います笑
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